最近『英語4技能』という言葉がよく聞かれます。英語4技能とは英語を「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つのスキルを指す言葉ですが、日本の英語教育では「話す/書く」のスキルが不十分とされてきました。
そのため『英語4技能』というと、今後「話すスキル」と「書くスキル」が重要になることを意味します。
今回は、インターナショナルスクールなどへは通わずに、普通の学校環境で育たれているお子様方を対象に、大学入試までに『英語4技能』の「話す/書く」のスキルを身につけておく必要性をお伝えしていきます。
英語4技能習得の重要性
受験生たちにとって『英語4技能を習得する重要性』が高まっているのは、現在の日本での英語教育の状況を見るとよく分かります。これからは「Listening」と「Reading」の2つに「Speaking」と「Writing」の2技能を組み合わせて練習する「アウトプットありきの英語勉強法」がたくさん求められるようになるでしょう。
皆さんが特に気にされているのは大学入試への対策のことだと思いますが、まず、英語4技能習得の重要性を改めて確認しておきましょう。従来の「読むこと」と「聞くこと」の勉強では何が足りないのでしょうか?
英語は4技能がないと発信できない
英語4技能とはすなわち、listening(リスニング)、speaking(スピーキング)、reading(リーディング)、writing(ライディング)の4つのスキル(skill=技能、能力)のことですが、英語でコミュニケーションを取るためにはどれも欠かせない能力です。
特に「話すこと」と「書くこと」ができなければ、自分の考えや思いを発信することができません。とりわけ「話すこと=英会話」については、多くの日本人が「英語を話せるようになりたい」と社会人になってからも勉強を続けています。早いうちから英語で発信する能力を身に付けられれば、将来も必ず役に立つはずです。
英語は4技能試験が当たり前になる
日本政府は全国的に子どもたちの英語能力を把握するため、文部科学省が実施している全国学力テストに、2019年度から英語を盛り込みます。そして、この英語テストで試されるのが「発信力」です。
発信力には「話すこと/書くこと」が必須となりますので、読み聞きして理解度をチェックするだけの試験ではいけません。文科省の目標は『中学生の英語発信力の基礎』が年々伸びていると確認することです。
なお、全国学力テストは、文部科学省が進める「英語教育改革」の実施内容の一環に過ぎません。これからは学校で実施される英語テストも『4技能試験』になるなど、次第に当たり前となっていく可能性が高いです。
英語を「話す/書く」スキルの必須化
全国学力テストで「発信力がどう採点されるか」ですが、2018年5月、中学3年生を対象に予備調査で使われた実際の問題 を見てみると、英語の会話をビデオで視聴し、自分の質問をコンピューターに録音する方式があるようです。また、読み聞きした内容についても、やはり自分の考えを書く方式の問題があります。
まとめると、おそらくこれからの英語試験では『4技能を組み合わせた複合的な問題が増えてくる』といえるでしょう。この方式の試験問題では、もし話の内容が理解できていたとしても「話す/書く」スキルがなければ回答できず『0点』になります。全ての問題がこういう組み合わせ問題になれば、どうなるでしょうか?
英語を「話す/書く」スキルは、日常生活同様、受験英語においても必須スキルとなります。今後、大学入試においても『4技能試験』が採用されていく見通しです。では、その大学入試について確認しましょう。
大学入試での『英語4技能試験』
大学入試では、2020年度より「大学入学共通テスト」が開始されると、英語4技能が評価対象に変わります。現行のセンター試験(2019年度まで実施)は「読む」「聞く」の2技能のみが問われる英語試験ですから、2020年度以降に大学入試に挑む中高生は、先輩たちと違った英語対策が必要になります。
これまでも、TOEFL、英検、TEAP などの『英語4技能試験』でスコアを持っていると、AO入試などで有利になる傾向はありました。ただし大学入試共通テストにおいては、文部科学省が「英語4技能を評価する民間の資格・認定試験を、大学入試の成績として活用することを正式に発表している」点が大きな違いです。
具体的には、高校3年生の4月~12月の間に受検した2回までの資格・検定試験の結果が大学に提供されます。つまり、高校1・2年生のうちに「話す/書く」スキルの基本を習得しておき、高校3年生になる前に最低1回は予行演習のテストを受けておきたいところです。
以下では、2020年度からの大学入試で使える『英語4技能試験』の代表的な3つをご紹介します。
1. 英検
2020年からの大学入試で成績として活用するためには「1度に4技能全てをテストする試験」との条件があり、従来の英検とは別に新方式の英検 が作られました。これらは S-Interview、S-CBT、CBT と呼ばれます。つまり、一次試験に合格してから別日に面接を受けるという方式ではありません。高校3年生の4月~12月に英検を受ける場合は、従来型ではなく新方式の英検を受験するようにしてください。
大学入試では、準2級(高校卒業レベル)以上の合格を目標にすると良いでしょう。話すスキルだけでなく、英作文といった書くスキルも重要になってきます。準2級レベルから「環境問題の解決法についてどうすればよいか」といった社会的な事柄が問われる問題も増えてきます。
また準1級になると、社会問題について口頭で論じる能力も求められます。このようなスキルは付け焼き刃で身に付けることはできませんから、日頃から様々な話題で『4技能を鍛える英語学習』をしておきましょう。
2. TOEFL iBT
TOEFL(トフル:Test of English as a Foreign Language)も多くの大学が英語力の目安として導入しつつあるので、注目が必要です。TOEFLは120点満点で、4技能がそれぞれ30点ずつ測定されます。4技能試験の代表的な存在ともいえるでしょう。
TOEFLは元々、英語圏の大学への入学や留学にあたって海外生活と学業に必要な英語力を測るテストでした。内容はややアカデミックな英語力を問うもので、人文科学やサイエンスの基本的な英単語を知っていることが必須です。英作文も学術的でハードなものなので、日頃から発信力の練習が欠かせません。
一流大学にTOEFLを使って進学したい場合、61〜80点を目指すことをおすすめします。また大学へ入学後も、英語クラスのレベル分けや成績のチェックにTOEFLを使用する大学が増えています。入学後に海外留学をして英語での教育を受けることを視野に入れている人は、少しでも高スコアを目指しましょう。
3. TEAP
TEAP(ティープ:Test of English for Academic Purposes)は英検協会と上智大学が共同開発したテストで、高校3年生の『英語4技能』を測ることを目的にしています。年に3回実施され、上智、早稲田、立教、青山をはじめとした約90の大学が採用しています。これから大学入試に挑むお子様がおられるご家庭では、TEAPの受験が必要でないか、お子様と一緒にぜひしっかりと確認してください。
TEAP および TEAP CBT で出題される問題は、大学教育で遭遇する語彙・場面・分野(英語で講義を受ける、英語の文献を読み解く、英語で発表を行うなど)を想定した設定・内容となっており、アカデミックな英語 ―English for Academic Purposes― に特化しています。TEAPの特徴とメリット | TEAP | 公益財団法人 日本英語検定協会
既に旺文社から「TEAP問題集」も発売されています。旺文社は英検協会との繋がりが深く、クオリティ面も信頼できます。TEAP採用大学の受験を考えている方は、技能別にどのような問題が出題されるのか、事前に問題集でチェックしておきましょう。
補足:大学入学後の『英語4技能』
ここでは大学入学後の『英語4技能』の必要性について、短く述べたいと思います。
大学に無事入学できたからといって、英語の勉強を疎かにできる時代は過ぎ去りました。文系理系を問わず、多くの大学で「英語での講義履修」が必須になりつつあります。つまり、英語文献を読み、英語でレポートを書いて、英語でプレゼンするといった、まさに『英語4技能が必要な場面』が存在するのです。それだけではありません、キャンパス内には世界各地からの留学生と交流するチャンスもたくさんあります。
さらに、帰国子女が大学を占める割合も高まっています。私の大学時代での英語プログラムでは、留学経験がないのは私だけでした。帰国子女の多くは、既に英検準1級やTOEFL80レベル以上の英語力を持っています。一流大学に進学するなら『帰国子女の学生に臆しないレベルの4技能』は身に付けておきたいですね。
まとめ
今回は、今後の日本の英語教育における『英語4技能』の重要性、そして2020年度から大学入試で活用される代表的な『英語4技能試験』を見てみました。ここで言えることは「インターナショナルスクールなど特別な環境にいなくても、一般的な学校教育で『英語4技能』を身に付けるべき時代になる」ということです。
世界のグローバル化にともない、これからは日本にいながらでも『国際社会の一員』として活躍できるような人材が求められます。遠くない将来、英語4技能をマスターしていて当然となる時代もやってくるでしょう。まずは、学校や家庭においていかに英語を「話す/書く」機会を増やすかが重要になりそうです。