『留学』と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか? 語学留学、大学留学、高校留学、短期ホームステイなど留学にもいくつか種類があります。その中でも今回は、アイルランドの首都ダブリンでの留学生活を「費用、ビザ情報、ダブリン観光情報」と併せてご紹介します。
1. ダブリンシティ大学での生活
はじめに、私が通ったダブリンシティ大学の概要とそこでの生活をご紹介します。アイルランドには、他にもトリニティ・カレッジ・ダブリン、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンなど名門大学がたくさんあります。ダブリンには学生が多いのも魅力の1つではないでしょうか。
1-1. ダブリンシティ大学とは
1975年に創設された「ダブリンシティ大学」はアイルランド国内では比較的新しい大学です。アイルランド国内の若い大学を対象とした成長度ランキングでは第1位を獲得、国内の新しい大学の先頭を走っています。
キャンパスは3つあり、名前の通りダブリン北部に位置します。16,000人以上の学生が在籍し、そのうちの22%が留学生です。上の写真のように「DCU」の略称がよく使われます。
1-2. 学生寮
学生寮は3つのキャンパスのうち2つのキャンパスにあり、Glasnevin Campus (グラスニーベンキャンパス) と All Hallows Campus (オールハロウズキャンパス) に2棟ずつあります。
寮の部屋は一人部屋で、ベッドの大きさをシングルとダブルから選べます。バスルーム (シャワー、洗面台、トイレ) 付きの部屋とバスルームを共有するタイプの部屋があり、どちらを選ぶかにより家賃が変わります。また、大きめのキッチンとダイニングルームがあり、数人または大人数でシェアします。
私が使用した部屋は大きな窓が1つ、勉強机と椅子、キングサイズのベッドとバスルームがついたシンブルな部屋でした。 教会の横にある古い建物をリフォームして学生寮にしたようで、昔のアイルランド文学に登場する建物のような趣を感じることができました。
もちろん、学生寮の他に「ホームステイ」や「自分で見つけた物件に住む」という選択肢もあります。
1-3. 授業
ダブリンシティ大学は5つ学部があり、健康科学部、人文・社会科学部、エンジニアリング・コンピューター学部、ビジネススクール、教育学部から選べます。
私が在籍した人文・社会学部の多くの授業では、学期の中間に短めの論文提出、論述テスト、プレゼンテーション発表があり、学期末に集大成となる長い論文提出、テスト、プレゼンテーション発表がありました。総合40点以上の成績で単位が取得でき、70点以上とれば A(優秀) か A+(超優秀) がもらえます。
日本の多くの大学では授業への出席率が成績に大きく影響しますが、こちらの大学では、出席を全く取らない授業が多いです。しかし、セミナー型の授業では出席数が成績に数パーセント加点されます。出席を全く加味しない授業が多いと言っても、授業に参加しなければ確実に授業に置いていかれます。よほど天才でなければ授業で得る知識無しに授業内容についての論文やテストで良い点数を取ることは出来ません。
プレゼンテーション発表は、多くの場合グループワークです。授業に出席しなければ、グループのメンバーに多大な迷惑をかけてしまいます。
学生たちの勤勉さには個人差もありましたが、講義型の授業でも学生からの質問が多く出ます。多くの留学生たちは第二言語 (英語) で講義を受けているため、英語が第一言語の学生に比べて理解が遅れてしまうこともあります。そんなときは焦らず、授業後でも良いので教授に質問しましょう。きっと親切に教えてくれます。
1-4. イベント
ダブリンシティ大学では、年間を通して様々なイベントが開催されます。
イベントは主に Student Union (学生自治会) により企画・開催されます。よく海外ドラマで見られるような Ball Party (ボールパーティー) と呼ばれる大規模なダンスパーティーから、毎週火曜にキャンパス内のバーで開催される Shite Nite (Shitty Night と同じような意味) という小規模のクラブイベントまで様々です。
ボールパーティーは季節ごとに開催されます。Welcome Party (新入生歓迎)、Halloween Party (ハロウィン)、Christmas Party (クリスマス)、End of Semester Party (学期末)、 Graduation Party (卒業) など、パーティーの種類によってボールパーティーの趣向も変わります。
新入生歓迎パーティーではアイルランドの伝説の妖精レプラコーンの仮装をして踊り、ハロウィンパーティーではキャンパス内の広い芝生広場に立てられた怪しげなサーカステントの中で、プロのミュージシャンたちのパフォーマンスを見ながら踊ります (仮装必須)。
その他、部活や同好会に入会すれば部内で開催される様々なイベントに参加できます。週末が暇になることはありません。
2. アイルランド留学費用
たくさんの魅力があるダブリンシティ大学での学生生活ですが、留学にはどれほどの費用が必要なのでしょうか? ここでは、学費、生活費、娯楽費、渡航費についてご紹介したいと思います。
2-1. 学費
Undergraduate (学士) の場合、学費は 14,000 〜 15,000 ユーロ (約180万円〜190万円) 、卒業に必要な年数は3〜4年です。どのコースを選ぶかによって費用と卒業に必要な年数が変わります。
Postgraduate (修士) だと、学費は 15,000 〜 19,000 ユーロ (約190万円〜240万円)、卒業に必要な年数はフルタイムで1年、パートタイムで2年です。フルタイムのコースは大学院に専念して学校へ通える学生向けで、パートタイムのコースは「仕事」と「大学院」を両立したい社会人向けのものです。
2-2. 生活費
次に生活費を見てみましょう。学生寮の費用は前述したように部屋のタイプによって異なりますが、2学期間 (約8ヶ月) で 3,500 〜 5,300 ユーロ (約45〜68万円) が目安です。
食費はかなり個人差がありますが、スーパーで安い食品を見つけて自炊を頻繁にするならば、月2〜3万くらいには抑えられるかもしれません。しかし、ダブリンの物価は安いとは言えません。街中のレストランで食事をすれば、お酒を飲まなくても1食15ユーロ (約2,000円) ほど掛かります。
そのため、学生は主にキャンパス内にある学生食堂で食事を済ませます。食堂は朝から開いていて、伝統的なアイルランド料理 (肉のスライスや魚のフライと温野菜やマッシュポテトの付け合わせにソースをかけたもの) を5ユーロ (約640円) で食べることができます。
街には低価格なファストフード店もたくさんありますが、ハンバーガー、フライドポテト、缶入りジュースのセットで6ユーロ (770円) が目安です。韓国料理やインド料理などアジア系大衆食堂もレストランと比べると比較的安価です。
2-3. 娯楽費
友達とのナイトアウトもダブリンを楽しむ一つの手です。街のパブには美味しいギネスビールがありますし、この街の人はお酒を飲んで踊ったり盛り上がったりするのが大好きです。
しかし、パブやクラブのお酒はかなり値段が高いです。ビール1杯 6 〜 10 ユーロ (約770〜1300円) が目安です。一方、コンビニエンスストアなどで購入すれば 3 ユーロ (約400円) ほどで缶ビールが買えます。
上記から想像できる通り、ダブリンでのナイトアウトはお金がかかります。大学主催のパーティーではお酒が学生価格 (4 〜 7 ユーロ) になることも多く、お金に余裕の無い学生はそこで大いに楽しみます。
2-4. 渡航費
東京からダブリンまでのフライトは、乗り継ぎのフライト時間が 17 時間ほどで、片道約 7 〜 9 万円です。短期留学の場合は往復チケットを買う方が多いと思いますが、長期留学 (1年以上) の場合の帰国便は入国後に購入する方が、費用を抑えられる場合があります。また、片道で購入する方が一度の出費も抑えられます。
3. 学生ビザでのアルバイト
さて、留学中はアルバイトをして生活費を稼ぎたいと考える方もおられるのではないでしょうか? それだけでなく、英語を使って現地で仕事をすることは貴重な経験にもなります。
日本人の場合、3ヶ月以内の観光を目的とした滞在であれば渡航前にビザを取る必要はありませんが、就労のためには
したり三ヶ月以上滞在するためには外国人登録をして学生ビザを取得、またはワーキングホリデービザの取得が必要です。
3-1. 学生ビザ取得方法
アイルランドでの学生ビザを取得するには、まず空港での入国審査の際に「3ヶ月間の滞在許可スタンプ」をパスポートに押してもらいましょう。留学先大学からの入学許可証、学費を支払い済みであることを証明する書類、銀行の残高証明書、飛行機のE-チケットを窓口に提出すればもらえます。
しかし、これだけで学生ビザを取得してアルバイトをすることは出来ません。アイルランド入国後に移民局で外国人登録をする必要があります。登録完了後に学生ビザがもらえて、週20時間までアルバイトをすることができます。
ただ、この外国人登録をするまでにかなり時間がかかる場合があります。なぜなら、登録手続き受けるために移民局 (Irish Naturalisation and Immigration Service) へ事前予約する必要があるのですが、混雑の影響で予約を取ることがとても難しいのです。すぐにアルバイトをしたい方は、渡航前からの予約をお勧めします。
3-2. 職種
ダブリンでの外国人の採用率はあまり高くはありませんが、探せば雇ってくれるお店はあります。
日本人の留学生がよくするアルバイトは、日本食レストランやアジア系フュージョンレストランでのホール・厨房スタッフです。バリスタなどの経験がある方は、COSTA や INSOMNIA などのアイルランド全域にあるコーヒーショップチェーンでも働けるかもしれません。
その他にも、Deliveroo という会社に登録して自転車でフードデリバリーのアルバイトをしたり、知り合いの家でベビーシッターをしている留学生もいました。
4. アイルランド人の英語
アイルランド人の話す英語を聞いたことがある方は分かると思いますが、アメリカ英語と比べるとかなり強い訛りが感じられます。
ダブリンは首都なのもあって外国から来た人がたくさんいます。そのため、ダブリンに住むアイルランド人の英語は比較的訛りが少なく聞き取りやすいです。長くイギリスの占領下にあったことからイギリス英語によく似ています。
しかし、アイルランド英語の訛りは20キロメートル進むごとに変化すると言われており、地域によって特徴があります。北ダブリンと南ダブリンでも訛りに違いがあるくらいです。訛りが特に強いアイルランド最南端の方では、まるで別の言語のように聞こえます。
最初は訛りに慣れないかもしれませんが、たくさんの人と会話しているうちに慣れてきて、聞き取れるようになります。留学生は特にインターナショナルな環境に身を置く可能性が高く、聞き取るべき訛りは1つだけではないはずですから、これも耳を鍛える良いチャンスです。
アイルランドではもう1つ、ゲール語という言語も使われています。ゲール語はアイルランドの伝統的な言葉ですが、イギリスの植民地にされたことで話者が激減してしまいました。ゲール語を話せる人はもうほとんどいませんが、今も街の標識や公共交通機関の電子版などに英語とともに表示されています。
5. ダブリン観光の予備知識
首都であるダブリンには見応えのある観光スポットがたくさん存在します。留学中にアイルランドの雰囲気を十分に楽しめるおすすめのスポットとともに、移動のために使えるバスやトラムの情報もご紹介します。
5-1. おすすめ観光スポット
ここでは、私が実際に行ってみて良かったダブリンの観光スポットを三つ紹介します。
The Long Room of the Old Library at Trinity College (オールドライブラリー)
ダブリン中心部にある大学「トリニティ・カレッジ・ダブリン」が保有する図書館です。ここにはケルズの書という歴史的価値の高い書物が展示されていて、この図書館とセットで見ることができます。
この図書館はスターウォーズに登場する図書館のモデルとなり、ハリーポッターに登場する図書館によく似ていると言われています。
National Gallery of Ireland (アイルランド国立美術館)
ダブリン中心部にある国立美術館です。豪華な室内に様々な画家の絵画が飾られています。フェルメールの「手紙を書く婦人と召使い」、さらにピカソやモネの作品も見ることができます。また、国立美術館の周りにいくつか国立博物館もあり、合わせて楽しむことができます。
Temple Bar (テンプルバー)
テンプルバー自体がおすすめというより、このバーがある区域全体がおすすめです。特に夜間にはたくさんのパブが立ち並び、アイルランドカラーの緑のライトに照らされた石畳が「これぞダブリン!」という雰囲気を醸し出しています。
5-2. 移動手段
★ 市バスを使う
ダブリンには市バスが通っており、街の郊外から中心部へ向かうバスや中心部を走るバスは本数も多いです。
しかし、日本のバスのように時刻表通りには来ません。そのため、バスとバス停の距離を機械が計測し、電光掲示板に「あと何分で到着予定」と表示される仕組みになっています。つまり、LIVE 時刻表です。
この LIVE 時刻表は、携帯のアプリでも見ることができます。このアプリが無ければ待ち合わせに間に合うか否かも運任せになってしまいますので、ダブリンで生活をするなら必ずダウンロードしておきましょう。
★ トラム(LUAS)を使う
ダブリンには LUAS と呼ばれるトラムが走っています。トラムは主にダブリン中心部から南ダブリンを繋いでいて、北ダブリンにはほとんど行きません。しかし、中心部から南ダブリンの間は速度も速く大変便利です。アイルランドの魅力は豊かな自然! トラムやバスでダブリンの街を出れば雄大な自然と出会えます。
★ Leap Card について
バスやトラムのチケットは現金で買うこともできますが、何度も利用するなら、バス・トラム・電車の全てに使用できる Leap Card という IC カードが便利です。また、運賃も割安になります。
Leap Card は「TFI Leap」のウェブサイト、会社が提携している代理店 で買うことができます。ただし学生用の Leap Card は各大学のスチューデントオフィスなどで購入しましょう。もちろん、購入後には提携ストアやトラム停車駅にあるチケット販売機でカードへのチャージができます。
ダブリン留学のまとめ
以上、アイルランドにある「ダブリンシティ大学」での学生生活をご紹介しました。
大学留学はどの国を選んでも大きなチャレンジとなるでしょう。他国で勉強するということは悩むことも多いですが、その分、得られるものも大きいです。諦めず最後までやり通せば、人生の選択肢は必ず広がります。海外の新しい街を存分に満喫しながら生活していれば、きっと素敵な友達も出来ます。
留学で得られるものは学力だけではありません。これから留学される皆さんにとって、かけがえのない経験が待ち受けていることでしょう。イギリス方面への留学を考えられている方は、留学先の候補国としてぜひともアイルランドを検討してみてください。今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。