私たちが「使える英語」を身に付ける近道は、知っている英単語をもっと深く理解することです。家や学校やオフィスで使い慣れた英単語を「生きた英語のやり取りの中で使いこなす」ことができるようになるだけで、英語に対する苦手意識は大分なくなるでしょう。
例えば、Note(ノート)、File(ファイル)、Chair(チェア)、Mirror(ミラー)、Place(プレイス)は、誰もが知っている簡単な英単語ですよね。でも、それぞれの単語を「名詞」や「動詞」として色んな使い方ができることはご存知ですか?
今回は、せっかく知っているこれら 5 つの単語、ちょっと掘り下げて、新しい使い方をしてみましょう。
1. Note ノート
文房具の「ノート」は、英語では Notebook と言います。Note は「メモ」という意味になるので注意!
- Take notes on ~
- ~についてメモを取る/書き留める
何かを書き留めることは、つまり注意が必要ということです。
- Please note ~
- ~に注意して下さい
- Noted.
- 分かりました
というように、会話中では、むしろ「動詞」としての方が頻繁に使われるかも知れません。
Note に Worthy(価値がある)という言葉をつなげた、Noteworthy 「注意する価値がある=注目に値する」という言葉もあります。また、Notice(名詞: 告知 / 動詞: 告知する)など、Note と同じ語源から来る単語もたくさんあります。つまり、単語を深く理解すると、より多くの英語が簡単に分かるようになります。
続けましょう。他には、楽譜上の「音符」 も Note です。
- a whole note
- 全音符
- an eighth note
- 8分音符
さらに、「紙幣」の意味もあります。
- a hundred-dollar note
- 100ドル紙幣
なお、ビジネス文章の最後などに N.B. と見かけたら Nota Bene の頭文字(ラテン語で Note Well の意味)で「注意せよ」の意味になります。日本語でいう注意書きマークとして使われる「注:」の感覚ですね。
カタカナの「ノート」ではない、英語の「note」、今までより深く理解できましたか?
2. File ファイル
「ファイル」は書類を束ねて保管する文具として慣れている言葉だと思いますが、情報そのものもファイルと呼ばれます。パソコンデータでも、ファイル(情報・記録)という言葉は良く出てきますね。
- Personal file
- 個人情報
それでは、次の意味を見てみましょう。見慣れた単語が並んでいますが、分かりますか?
- File a suit
- 訴訟の準備を整える=訴訟を起こす
ここでの File は動詞として使われています。また、suit は洋服のスーツと同じ単語ですが、ここでは「訴訟」という意味になっているため、さらに分かりにくかったのではないでしょうか? 1つ目の Note と同様に、単語は「名詞」より「動詞」としての意味をイメージで持っておく方が柔軟に対応できますね。
なお、File には「やすり」の意味もあります。ネイルアートをされる方なら、「ネイルファイル」でご存知でしょう。この「File」を動詞で使うと「やすりをかける」、長じて「磨く/削り取る」の意味になります。
- The dentist filed the sharp point off from the tooth.
- その歯医者は、その歯の尖っていた部分を削り取った。
3. Chair チェア
Folding chair(折りたたみ椅子)に、Wooden chair(木製椅子)。背もたれのないものは Stool(スツール)ですが、Chair という単語が「椅子」という意味を持つことは、誰もが知っているでしょう。
そんな Chair を「動詞」として使うと、「議長/司会をする」という意味になります。イメージとしては割と分かりやすいので、以前に聞いたことがあって「知っている!」という方も多いかも知れませんね。
- Chair a meeting.
- ミーティングの議長を務める。
また、この意味の Chair に Person(人)をくっつけると、以下のようになります。
- Chairperson
- 議長
1つ1つの単語を「動詞」のイメージで深く理解することに慣れてくると、新しい単語を見たときも、すぐに英語のイメージで捉えられるようになってきますよ。ここで止まらずに、最後まで一気にいきましょう!
4. Mirror ミラー
- Look into the mirror.
- 鏡を見る。
- Hand mirror.
- 手鏡
モノを映し出す Mirror は、動詞として、物事を「正確に反映する」という意味で使われることがあります。
- I feel like this song mirrors my own experiences.
- この歌は、まさに私自身の経験のことをいっている気がする。
また、相手の「動作」を真似することで、その人の好感度が上がるという話を聞いたことがありませんか? 実は、これも英語では mirror という単語を使って「ミラーリング」と表現されます。面白いですね!
- Hey, are you mirroring me?
- ねぇ、私の動き真似してるの?
余談ですが、ルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス 」(Alice’s Adventures in Wonderland)続編の「鏡の国のアリス」原作名は「Through the Looking-Glass, and What Alice Found There」といい、実は、このように Glass(ガラス) もミラーの意味で使われたりします。
その他には、Serene as glass / mirror(鏡面のように穏やか/静か)という言い回しがあります。日本にも、「”鏡”のように波のない穏やかな心」を意味する「明鏡止水」という四字熟語がありますが、文化が違えど、どちらも穏やかな状態を「鏡」で表現しているのは興味深いですよね。
5. Place プレイス
- Nice place!
- いいところですね!
- Could you let me know the time and place? Thank you!
- 時間と場所を教えてもらえますか?ありがとうございます!
この Place「場所」も、ほとんどの人が知っているお馴染みの英語ですよね。あなたのところ、私のところ、といった具合に、誰かの居場所を指す意味でも良く使います。
- Please come to my place at 1 p.m.
- 午後1時に、私のところ “自宅やオフィスなど” へお越しください。
他に、良く使われるフレーズとして Take place「開催される」も、ぜひ覚えておきましょう。
- Flea market will take place on Saturday.
- 土曜日にフリーマーケットが開催されます。
また、その「場所」にそぐわないときや、「場所」からズレているときは、以下のような表現を使います。
- I feel out of place here, like I really don’t fit in.
- ここ私には場違いよ、まるで馴染めないもの。
- Help, I think my jaw is out of place.
- 助けて、あごが外れてるみたい。
ところで、この place も、もちろん動詞になります! ここまでに紹介してきた4つの単語でもそうしてきたように、place を「動作」でイメージしてみましょう。基本的には、何かを「置く」もしくは「特定の場所に位置させる」といったニュアンスになります。次の例文を見てみてください。
- Place an order online.
- オンラインで発注する。
- Place tomato wedges on a plate.
- お皿にくし切りのトマトを置く。
それから、頭に mis を付けて Misplace とすると、「間違って置く=置き違える/置き忘れる」となります。この接頭語の mis は 、Mistake の mis と同じで、漢字の「誤」に相当します。
- I think I misplaced my wallet somewhere…
- どこかに財布を置き忘れたみたい…
N.B.
「ランションマット」は和製英語で、正しくは Place mat です。
まとめ
以上、ざっと挙げてみましたが、お馴染みの単語にも色々な意味があると分かれば、使い道が広がりますね。意味が連想できるものは、覚えやすくもあります。また、良く知っているつもりの英単語にも、思いがけない意味があったりするのも面白いですよね。
身近な言葉ほど多くの意味や派生語があります。今回ご紹介した5つの単語は、あくまでも例に過ぎません。ぜひ、身の回りにある英単語でも「知らない使い方」がないかどうか調べてみて下さいね!