日本語と英語の違いを訳すコツ

皆さんには、伝えたい日本語を表す英語が思い付かず、英訳に困った経験がありませんか? 日本語と英語は文化的背景が違いますので、その物ズバリを表す言葉がないことはよくあります。日本語から英語に英訳するためには、日本と海外における文化的背景の違いについても理解しておく必要がありますね。

つまり、ただ単に「日本語を英語に変換」するのではなく、話している相手の文化的背景にも合わせながら、伝えたいことの「意味」を英訳することが大事になります。今回の記事では、私が実践している英訳のコツをシチュエーション別に『2つのパターン』に分け、実例を使った解説をしながらご紹介いたします。

日本語の英訳パターン1のコツ. 英語にない表現を英訳するとき

まず、大前提として『日本語と英語は根本的に違う』ということを理解しましょう。文字や文法構造や発音の違いよりも前に、そもそも同じ表現がない場合だって珍しくありません。

例えば、ご飯を食べる前に私たちが使う「いただきます」ですが、この言葉に当てはまる英語はありません。また、日本の職場で頻繁に使われる「お疲れ様です」も、英語にない表現です。

とはいえ、英語には単純変換できる言葉がないから「何も言わない」というワケにはいきませんよね。では、これら2つの英語にない日本語表現を「英訳」するにはどうすれば良いか、実際に考えてみましょう。

例1. 英語で 「いただきます」 と言いたい

日本語と英語の違いは食事にも

まずは、日本語で「本当に伝えたいこと」を文化的背景から考える必要があります。「いただきます」という言葉の場合、食べ物やご飯を作ってくれた人々への感謝の意味がありますよね。

英語で同じことを言いたい場合は、あなたが特に感謝したいことは『何か』を、シチュエーションに合わせて考えると良いでしょう。例えば、時間を掛けて凄く豪勢な料理を作ってくれた人に対して「いただきます」と言いたいときなら、次のように言うことができます。

“Thank you for preparing such a wonderful meal.”
「こんなに素晴らしい料理を準備してくれてありがとう。」

もう1つ例を挙げます。雪の降る寒い日に外から帰ってきて、「ああ、やっと温かい料理が食べられる!」というときの「いただきます」を英語で考えてみてください。次のような言葉も、ぴったりきますよ。

“I am so glad to have a hot meal!”
「やっと温かい料理が食べられるー、嬉しい!(いただきまーす!)」

つまり、日本語の「いただきます」を表す英訳に『1つの正解』はありません。地域によっては、食事の前に何かを言う習慣がないところもありますので、特に何かを言う必要のない場合もあるくらいです。

ちなみに、欧米では、食べ始める前に何かを言う代わりに「神への感謝」を捧げる方々もいます。そんな席で食事をすることになった場合は、周りのみんなに合わせるのが良いでしょう。

例2. 英語で 「お疲れ様」 と言いたい

日本語の「お疲れ様」を英訳したい

また、同僚に「お疲れ様」と言いたいときも、自分が「本当に伝えたいことは何か」を考えれば自然と言葉が出てくるはずです。例えば、何かの質問をする前のワンクッションとして「お疲れ様」と言いたい場合なら、目的は「声を掛けて挨拶をすること」と言えます。1つの例としては、次のような英訳が合いますね。

“Hi, how’s going?”
「やあ、どんな感じ?」

今度は、帰り際に「お疲れ様」と言いたい場合の英訳も考えてみます。こちらも、シチュエーションによって色々な意味に解釈することができますね。残業なしの日と残業をした日、週半ばと週末でも違いがあります。

“See you tomorrow, have a good evening!”
「また明日。良い夜を!」
“Thank you for your help today, see you next week.”
「今日は手伝ってくれてありがとう、じゃあまた来週ね。」

英語にない表現を英訳する際のコツは、イメージを英語で考えて話すことです。英語で考えることによって、「この日本語ってどう言えばいいんだっけ?」と考える時間が減り、発話がスムーズになりますよ。

日本語の英訳パターン2のコツ. 日本特有の文化を英訳するとき

次に、日本特有の文化を説明しなくてはいけない場合を考えましょう。色々な国の人と話しているときにも、日本特有の文化が基となった話題になることは珍しくありません。

例えば、今 au のテレビコマーシャルで大活躍している日本昔話のキャラクターがいます。私たち日本人には馴染みある文化でも、そもそも物語を知らない外国人にとっては「誰?」という感じですよね。

こんなときは、どうすればいいでしょうか? 実際に、私の体験を例にして紹介していきます。

例.浦島太郎になった気分と言いたい

文化的背景の違いから直訳で英訳できないことも

自分が時代遅れと感じたときなどに「浦島太郎になった気分」と表現することがあります。これを海外の人にそのまま英訳して伝えたしても、真意は伝わりません。かと言って、文化的背景から説明していると、とても長くなってしまって意味が伝わりにくくなってしまいますよね。

こういう場合は、次のように順を追って説明してみましょう。

1.まずは意訳する

“He/She said, I feel so old.”
「彼/彼女は『すっかり年を取った気分』と言ったのよ。」

2.次に直訳を伝える

“Actually he/she said, I feel like being Urashima Taro.”
「実際は、彼/彼女は『浦島太郎になった気分』と言ったの。」

3.最後に背景を説明する

“Urashima Taro is a famous character from Japanese old story.”
「浦島太郎は日本の昔話の登場人物なの。」
“In the story, he went to the world under the ocean for a while, and he realized so many years had past when he came back to his town.”
「その昔話では、彼はしばらく海の中の世界に行くのね。それで、自分の村へ帰って来たときにものすごい年月が経っていたことに気付くのよ。」
“That’s why if you say ‘I feel like being Urashima Taro’ means ‘I feel so old’.”
「だから、『浦島太郎になった気分』というと『すっかり年取った気分』の意味になるの。」

相手が近しい間柄の場合は、このように背景まで伝えることができると、日本文化の理解が深まる良い機会になりますね。ただ、同時通訳など英訳スピードが重視される場合は、1の意訳を伝えるだけで十分です。

日本語を英訳するコツまとめ

日本語を英訳するコツまとめ

いかがでしたか? 今回は、日本語と英語の違いを「文化的背景」まで意識しつつ、

1.英語にない表現を英訳するとき
2.日本特有の文化を英訳するとき

の2パターンのコツをご紹介いたしました。

いずれの場合も、伝えたいこと本来の意味をきちんと把握することが大切です。言葉そのものではなく、その言葉で「何」を伝えようとしているかイメージできれば、より自然に英訳できるようになるはずです。ぜひ、参考にしてみてください。今回の記事も、皆さんの英語での文化交流のヒントになれば幸いです。