英語には「しかし」「それでも」「にもかかわらず」などの『逆接』を表す言葉がたくさんあります。今回はプレゼンテーションや英語論文など「話を論理的に組み立てるとき」に『反論』や『否定』の意味で補われる6つの代表的な『逆接表現』の使い方を例文と共にご紹介します。
1. 英語の逆接の基本 but
意味:しかし、でも、けれども、だが
but は1番シンプルで使用率の高い逆接です。「しかし」「でも」「けれども」「だが」などの日本語とほぼ同じように『2つの相反する文』を対比させるのに使います。この but はカジュアルな印象が強いので、口語体の構文に向いています。文語体でも使いますが、その際は注意すべきことがあります。
口語の but の使い方
口語体で but を使う場合、but が「文頭」にきても特に問題ありません。
- A: Hey, would you like to go to the concert with us?
- ねぇ、私たちとこのコンサートに行かない?
- B: Nah, I’m out.
- いやぁ、私はやめとく。
- A: Alright. But why? I remember you said you liked this artist.
- わかった。でもなんで? あなたがこのアーティスト好きだって言ってたの覚えてるよ。
- B: I said so. But I’m saving money for a trip right now.
- 言ったよ。でも今旅行のためにお金貯めてるんだよね。
文語の but の使い方
文語体でも but は使いますが、フォーマルな文語表現では but は文頭には使わず、相反する2つの文の間に「通常はカンマを前に置いて」使います。
- The number of suicides has decreased gradually, but the number of people who are suffering from depression has not changed.
- 自殺者数は徐々に減少したが、うつ病に苦しむ人の数は変わっていない。
もし「カンマなし」の状態で添削をお願いすると、このような部分もしっかり修正されます。口語のときには気にしなくて良いことですが、文語で but を使うときは上のポイントに気をつけましょう。
なお、どうしても「文頭で逆接表現を使いたい」ときは、後ほど紹介する however を参考にしてください。
2. フォーマルな印象の yet
意味:だが、それなのに、それでも
yet は意味がとても多く、副詞の「まだ」(否定文の「まだ〜ない」)の用法をイメージされる方が多いかと思います。ですが、実は yet も上記のように but と近い逆接の意味で使うことができます。
逆接の yet の使い方
逆接の yet は but よりもかしこまった印象があり、フォーマルな構文によく合う単語です。
使い方は前述の but とよく似ていて、文語表現で「文頭」に置くとやはり文法的に誤りとなります。文中で文を繋ぐ位置に「カンマ」を置いてから yet を使いましょう。
- The study illustrates that his theory is consistent, yet it still needs further verifications.
- この研究は彼の論説が首尾一貫していることを示したが、さらなる検証をまだ必要としている。
上記例文の yet it still … のように still と組み合わせたり、and yet … のように and と組み合わせたり、but と比べると「否定」や「反論」を述べる2つ目の文を「より強調しやすい」ことも特徴です。
- I know it’s not so easy, and yet I don’t want to give up.
- そんなに簡単じゃないことは分かっている、それでも私は諦めたくない。
3. 文頭にも置ける however
意味:しかしながら、けれども
however はフォーマルな接続副詞で、かしこまった文章によく使います。英語論文に使えるかなり文語的な表現ではありますが、プレゼンテーションやスピーチの場で「堅めの話し言葉」としても使えます。
文頭のしかしの英訳に最適
また、however は副詞なので but とは違い、フォーマルな構文の文頭にも使えます。そのため、論文などで「しかし」の逆接を『文頭』に使っている日本語文を英訳するときは however を使うと良いでしょう。
なお、英語での副詞の後にはコンマを入れます。ですから、however を文中で使う場合は「コンマで両側を囲む形」になりますので、こちらは使い方のポイントとしてぜひ抑えておきましょう。
- However, the graph shows an inequality.
- しかしながら、このグラフは不平等を示している 。
- The government warred against poverty, however, people are still suffering.
- 政府は貧困と戦ったが、人々は未だに苦しんでいる。
4. さらに堅い nevertheless
意味:それにもかかわらず、それでも
nevertheless はかなりフォーマルな接続副詞で、使い方は however に似ていますがさらに堅い印象です。論文、報告書、契約書などの文章で、文頭によく使われます。
- Nevertheless, the population continues to increase in those areas.
- それにもかかわらず、それらの地域では人口が増え続ける。
5. though を含む3つの表現
この3つの形がよく似た接続詞は「〜ではあるが、〜であった」などの反論、または譲歩の意味で使います。
although と even though
意味:〜であるが、〜だけれども、〜とはいえ
although と even though の違いはほとんどありませんが、even though の方がより強調を強くした表現と言えるでしょう。どちらも文頭に使うことが大半ですが、文中に使うこともできます。
なお、文頭に使う場合には「〜にもかかわらず」を意味する側の文節に「コンマ」を置いて区切ります。文を入れ替えて文中に although/even though を使う場合は、コンマは要りません。
- Although/even though the discussion got heated, no solution was found.
- (No solution was found although/even though the discussion got heated.)
- 討論は激しさを増したが、なんの解決策も出なかった。
カジュアルな though の使い方
意味:〜だけれども、〜にもかかわらず、もっとも〜だが
though は although/even though と比べると、意味は同じでもカジュアルな表現になります。口語体でよく使い、フォーマルな文語体ではあまり使いません。カジュアルなので、文頭でも文中でも使えます。
- I repaired the door, though my brother broke it.
- 私がそのドアを修理した、もっとも私の兄がそれを壊したのだが。
副詞の意味「〜けど」もあります。かなりカジュアルな口語的表現です。
- I was having cold last night. I recovered already, though.
- 昨日風邪ひいてたんだよね。もう治ったけどさ。
6. 前置きの内容を強調する逆接
意味:〜にもかかわらず
in spite of と despite に意味と使い方の違いはほとんどなく、その文節の反論や否定へと内容を導きます。ただし、これまでに紹介してきた逆接表現と比べると「前置きの内容を強調する」ことがポイントです。
- In spite of what had happend to him, people kept calm and working.
- 彼に起こったその出来事にもかかわらず、人々は冷静なまま働き続けた。
- Despite all the efforts she made, the kitten didn’t make it to survive.
- 彼女の捧げたそのすべての努力にもかかわらず、その子猫は生き延びられなかった。
使い方ですが、in spite of と despite の後には原則として「名詞または動名詞」が来ます。とはいえ、この「名詞または動名詞」の部分は修飾によってしばしばとても長くなります。また、in spite of と despite を文中に使う場合ですが、although と even though を文中に使うときと同様にコンマは不要になります。
- In spite of the government’s effort to invigorate local communities, young people are leaving rural areas.
- 政府の地域活性化の取り組みにもかかわらず、若者は地方を離れている。
- Despite the fact that he became rich and famous very young, he made a terrible mistake.
- 若くしてお金持ちになり有名になったにもかかわらず、彼はとんでもない過ちを犯してしまった。
逆接の英語表現まとめ
今回は、英語の「しかし」「それでも」「にもかかわらず」を表す『逆接表現』をご紹介しました。
- but
- yet / yet it still / and yet
- however
- neverthless
- although / even though / though
- in spite of / despite
英語論文などを書く際には「同じ逆接表現」を繰り返し使うのではなく、いくつかのバリエーションをつけて表現した方が文章のレベルは上がります。英語で文章を書く際の参考にしていただければ幸いです。