ビジネスの世界で実際に使われる会話の多くは、実は中学校で覚えた英単語で十分対応することができます。せっかく覚えた英単語ですから、ビジネスシーンでも使わない手はありません。ただし、中学生目線のままで中学英語の勉強を「そのまま」やり直してしまうと、期待できるほど結果は得られません。
そこで、今回の記事では「中学英語レベルの単語がビジネス英語として使われる3つのシナリオ」を具体的に解説していきます。各シナリオで5つずつ、合計15の英単語が「ビジネス英会話」として登場しますので、例文を見ながらそれぞれのシナリオに慣れ親しんでいきましょう。
中学英語ビジネス応用のシナリオ①名詞よりむしろ動詞として使う
「book」「face」「present」など、カタカナでも日常的に見かけるほど誰もが知っている名詞の英単語。これらの名詞は、ビジネスでは「名詞」としてではなく「動詞」として使われることが多いです。
1.book「予約する」
book「本」は、ビジネス英語では「(ホテル、部屋、飛行機などを)予約する」の動詞として使います。
- Can you book a flight to New York for me?
- ニューヨーク行きのフライトを予約してくれませんか。
2.face「直面する」
face「顔」は、ビジネス英語では「(問題や課題に)直面する」という動詞で使われることが多いです。
- Our company is now facing a great challenge.
- 我が社は今、大きな試練に直面している。
3.present「プレゼンする」
present「プレゼント」は、ビジネス英語では「(会議などの場で)~をプレゼン(発表)する」という動詞として使えます。「プレゼンする」は make (give) a presentation ということもできます。present を動詞として使う場合、発音は [prizént](アクセントは後ろの e に置く)となるため注意しましょう。
- I’ll present a new marketing plan to my boss tomorrow.
- 私は明日、上司に新しいマーケティング計画のプレゼンをする。
4.place「注文する,(注文書を)発行する」
place「場所」も、ビジネスでは動詞として place an order「注文する,(発注書や注文書を)発行する」のように使うことが多いです。なお「発注書・注文書」は purchase order(略してPO)といいます。
- I’d like to place an order for delivery.
- 配送の注文をお願いします。
また、以下の記事でも「place」の様々な使い方が解説されています。お馴染みの名詞が動詞として使われる他の例も紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
5.coin「新語・造語を作る」
coin「コイン」は、動詞として使われる場合は「新語・造語を作る」という意味になります。また次のようにcoined word (coined term) で「造語」となります。
以下の実例では、name「名前」も名詞ではなく「名付ける、命名する」の動詞として使われています。
- We need to come up with a newly coined word to name our next new product.
- 私たちは次なる新商品のネーミングに、新たな造語を考え出す必要がある。
中学英語ビジネス応用のシナリオ②着眼点や発想を変えて使う
ビジネスシーンでは一見使われそうにない中学英単語でも、着眼点や発想を変えるだけで洗練されたビジネス英語に変身します。たとえば、学校では「homework」を忘れても先生に怒られるくらいでしょう。一方、ビジネスにおいて「homework」を忘れると命取りになることも!
6.homework「調査、下調べ」
ビジネスにおける homework「宿題」って何でしょう? たとえば、新たな顧客と取引を始める前には、その会社の与信を「調査」したりしますよね。ビジネスにおいては、このような「調査、下調べ」という意味で homework を使うことができます。
- If you are considering purchasing a business, do your homework, that is, due diligence.
- 事業買収を検討しているなら、下調べ、つまりデューデリジェンスを実施しなさい。
※参考:due diligence「デューデリジェンス」とは、物件や企業の買収を行なう際に、その資産価値や想定される収益力、リスクを詳細に調査・分析することです。
7.room「余地」
room は「部屋」という意味ですが、ビジネス英語では「コンセプトとしてのスペース」というニュアンスがあり「何かを実施する可能性や機会」を指します。たとえば、room for improvement「改善の余地」、room for growth「成長の余地」、room for discounts「値下げの余地」などの使い方があります。
- There is no room for further discounts. We already offered you our best price.
- これ以上の割引の余地はありません。我々はすでにベストプライスを提示しています。
8.window「機会」
window「窓」は、ビジネス英語では「チャンスの窓(window of opportunity)」という意味合いとして使われることがあります。たとえば、ビジネスの取引について話しているときに The window is closed. といえば、それは「窓が閉まっている」のではなく「取引の機会を逸した」ことを示唆しています。
- You have to make a decision quickly because of the limited window of opportunity.
- 機会は限られているので早めに意思決定を下すべきだ。
9.close「(取引を)成立させる」
close は中学英語では「(窓を)を閉める、(目を)閉じる」などでおなじみですね。一方、ビジネス英語における close は、同じ「閉める」でも「商談をしめる」つまり「取引(deal)を成立させる」という意味で使います。
- If you don’t close a deal, you’re not going to make any money.
- 取引が成立しなければ、収入は得られない。
10.run「経営する」
run「走る」は目的語を必要としない自動詞。一方、ビジネスで出てくる run は目的語を必要とする他動詞として使い、「(会社やビジネス)を経営する、営む」という意味になります。
- Having a clear set of goals for running a business is crucial.
- 事業経営において明確な目標を持つことは極めて重要だ。
中学英語ビジネス応用のシナリオ③組み合わせでイディオムとして使う
最後に、中学レベルの英単語を別の単語と組み合わせ「イディオム」として応用している事例を解説します。
11.hit bottom「(景気などが)底を打つ」
hit は「打つ、叩く」という意味ですが hit bottom で「(景気などが)底を打つ」という意味になります。景気が底を打ったということは、いわゆる「二番底」がない限り「今後は景気が上向きになっていく」というニュアンスが含まれています。
- The economy has finally hit bottom. So, we can expect more sales next year.
- 景気がやっと底を打った。だから、来年は売上増が期待できるね。
12.on the table「(議題として)検討中の」
table「テーブル」は、ビジネスでは on the table というと「検討中の、既に議題に挙がっている」という意味になります。また「議題として~を取り上げる」と言いたい場合は、put (get) … on the table と前に動詞「put」や「get」を使います。いずれも中学で習った英単語ですが、立派なビジネス英語です。
- That’s a good idea! Why don’t we put that topic on the table for tommorow’s meeting?
- それはいいアイデアだね! 明日のミーティングで議題として挙げたらどうでしょう?
なお Why don’t we … のフレーズは「~するのはどうでしょう?」と提案をするのに良く使われるフレーズですので、ぜひ合わせて覚えておくようにしましょう。
13.in writing「書面で」
writing は write「書く」の進行形ですが in writing では「文書や書面に残して」という意味になります。特に海外との取引における契約は「口頭の形として」(orally)だけではなく「書面の形で」残しておきたいものです。そんな時に使えるのが、この in writing です。
- This type of contract needs to be in writing.
- この種の契約は書面で残しておく必要があります。
14.get to ~「~に取り掛かる」
get to … は「~に到着する、~に着く」という意味で使い慣れていると思いますが、ビジネスにおいては「(仕事やプロジェクトなどに)取り掛かる」という意味にもなります。
- There’s an urgent job to be done. Let’s get to it!
- やらなければならない緊急の仕事がある。早速取り掛かろう!
15.roll out「展開する、発表する」
roll は動詞で「回転する、転がる」という意味でご存知だと思います。一方「roll out」というイディオムをビジネスで使うと「(製品・サービス・キャンペーンなど)を新たに展開する、発表する」という意味になります。生地をローラーで慣らすように、展開したいことを「周りに伸ばして広げていく」イメージです。
- When do we roll out our marketing strategy?
- 我が社のマーケティング戦略はいつ展開しますか?
今回のまとめ
中学英語レベルの単語が「ビジネス英語」で使われる3つのシナリオについて、5つの英単語と例文を挙げて解説しました。最後にポイントと単語をおさらいしておきましょう。思い出せない場合は、記事を読み返して再確認をしてみてください。
①「名詞よりむしろ動詞として使う」
- book
- face
- present
- place
- coin
②「着眼点や発想を変えて使う」
- homework
- room
- window
- close
- run
③「組み合わせでイディオムとして使う」
- hit bottom
- on the table
- in writing
- get to
- roll out
ビジネスシーンで使える中学英単語は、上の例以外にもたくさんあります。今回は分かりやすい例を厳選して紹介させていただきました。ビジネスの現場で、ぜひ積極的に使ってみてください。